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    <title>貸し本棚</title>
    <link>https://kitaoojimasahiko.kashi-hondana.com</link>
    <description>貸し本棚・小説更新情報</description>
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    <copyright>Copyright ©2026 北大路真彦.</copyright>
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    <item>
      <title>第二十話「光翼」 - 花魁鳥は夜に啼く</title>
      <link>https://kitaoojimasahiko.kashi-hondana.com/author/page/293/section/7730</link>
      <pubDate>Sat, 08 Jan 2022 12:59:00 +0900</pubDate>
      <description>死者は生きたいとあがく。
生者は生きたいともがく。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　龍泉寺琴律《りゅうせんじことり》は下腹部の不快感を堪えきれずに目を覚ました。
　｜ずん《・・》と重い疼痛が止まらない。
「……」
　辺りは暖かく、明るく、遠くから鳥の声も聴こえてきていた。
　身を起こして周囲を見回す。屋内であった。箱やら書物やらが所狭しと積まれている。琴律はこの場所に覚えがあった。
「ここは……もしや」
　引き戸をごろりと開けて外に出る。思った通り、根之國《ねのくに》の『春』の部屋——散々迷って化物に追われた挙句に逃げ込んだ、屋敷の庭園であった。横たわって寝ていたのは、蔵の中だったのだ。
　以前六人で見て回った通り、庭の蔵の外には手水場《ちょうずば》と木造の便所がある。ぴったりと閉じた扉には護符《おふだ》が貼られ、押しても引いても開くことはなかった。
　屋敷の周囲には塀が巡らされ、門も設えられていたが、こちらもぴったりと閉ざされて、琴律の力を以ってしても全く開く気配がな...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>第十九話「罪咎」 - 花魁鳥は夜に啼く</title>
      <link>https://kitaoojimasahiko.kashi-hondana.com/author/page/293/section/7729</link>
      <pubDate>Sat, 08 Jan 2022 12:58:00 +0900</pubDate>
      <description>死者は生きたいとあがく。
生者は生きたいともがく。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　アスファルトの地面に落ちた煙管《きせる》を這いつくばって口に咥え、橋姫《はしひめ》はゆっくりと身を起こした。
　夜の闇の中、炎に照らされ、激闘の痕《あと》が浮かび上がる。
　三人の少女が、弱々しく痙攣しながら転がっている。
　釘打ち鬼と化していたはずの霊女は、精も根も尽き果てたものか、立ったままで少女らの様子をしばらく眺めていた。
　左頬の火傷が、めらめらと燃え続ける炎に炙られ、疼いた。
　やがて覚束無い足取りで、ゆっくりと三人に向かって歩み寄る。
　景《けい》の傍に立つと、橋姫は裸足でその胴体を蹴り起こし、仰向けにさせた。
　全身に無惨な孔《あな》を空けられ傷だらけになった景が、激しく咳き込む。それすらも痛みに変わり、景は呻いた。
「ほほ。矢張り蝮《マムシ》の如き岩乗《しぶと》さじゃわ。滅多な事で死にはせなんだな」
　にい——と笑うと、橋姫は咥えた煙管を左手に落として持ち、振り上げた。...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>第十八話「黒翼」 - 花魁鳥は夜に啼く</title>
      <link>https://kitaoojimasahiko.kashi-hondana.com/author/page/293/section/7728</link>
      <pubDate>Sat, 08 Jan 2022 12:58:00 +0900</pubDate>
      <description>死者は生きたいとあがく。
生者は生きたいともがく。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　龍泉寺《りゅうせんじ》琴律《ことり》は左手に掴んだ女を蹴り飛ばした。反動の勢いで右手の刀を手前に引くと、女の胴体が腕から離れて吹っ飛んでゆく。
「四千九百八十八！」
　朦々たる血煙《ちけぶり》を浴びながら、琴律は熱い息を鞴《ふいご》の如く吐き出した。
　次に視界に捉えた女は、振り向いてすぐ、右腕の先にいた。
　顔面に彫られた「一」の文字のど真ん中に刀を刺し込む。そのまま力任せに斬り下ろすと、臍の辺りまで一気に着物と肉とが裂けた。
「四千九百八十九！！」
　気魄一閃、引き抜いた刀を、後方に立つ女目掛けて投げつける。黒い刀は過《あやま》たず女の喉笛を貫いた。
「四千九百九十ーッ！！！」
　琴律の鋭い回し蹴りが女の側頭を薙ぎ払うと、突き刺さった刀を支点として、首がぐるりと横回転して捥げ落ちた。
「大ちゃん……」
　立ったまま首を失い動かなくなった女から、刀を乱暴に引き抜く。
　琴律は足元に落と...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>第十七話「六寸釘」 - 花魁鳥は夜に啼く</title>
      <link>https://kitaoojimasahiko.kashi-hondana.com/author/page/293/section/7727</link>
      <pubDate>Sat, 08 Jan 2022 12:56:00 +0900</pubDate>
      <description>死者は生きたいとあがく。
生者は生きたいともがく。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　青い空の下《もと》、龍泉寺《りゅうせんじ》琴律《ことり》は打刀を振り下ろし、付着した血と脂《あぶら》とを払った。赤い血は黒い刀身から離れて白い石にかかり、静謐で厳粛だった河原を穢《けが》す。
　抜き身の刀身からは、墨のような焔《ほのお》が立ち昇っている。一時はただ黒い色をしているだけの刀であったが、ここへきて、揺らめく気焔が可視化されてきたように思えた。
　ふうと一息つきながら、琴律は顔にかかった黒髪を指で除《の》けると、持っていた刀を川の水に突っ込んだ。左手には刀の鞘と、斬り伏せた女から剥ぎ取った粗末な着物を持っている。
　水から抜いた刀を着物で拭うと、艶のないはずの刀身に鈍い輝きが宿ったかのように、琴律には見えた。
　琴律の背後に転がっているのは、幾十幾百もの女の亡骸《なきがら》。
　白く静かな河原には襤褸《ぼろ》を纏った女たちが居り、琴律は駆け抜けざまに、それらを皆《みな》斬ったの...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>第十六話「受付嬢」 - 花魁鳥は夜に啼く</title>
      <link>https://kitaoojimasahiko.kashi-hondana.com/author/page/293/section/7726</link>
      <pubDate>Sat, 08 Jan 2022 12:55:00 +0900</pubDate>
      <description>死者は生きたいとあがく。
生者は生きたいともがく。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　記憶を頼りに里山の道を走ると、大門が見えてきた。
　左手に刀を携えた龍泉寺《りゅうせんじ》琴律《ことり》は足を停め、無人の門の前に立った。
　普段なら、巨大な二人の門番が立ち塞がっているのであろうが、彼らは現在、中津國《なかつくに》——つまり生者の住む世界に出向しているところである。
　琴律は明るい陽射しに目を細めて巨大な門を見上げると、なんの警戒もせず、木造りの門扉に掌を当てた。さすがに門錠がかけてあると見え、みしりとも動かない。
　打刀を地面に置き、琴律は全身を翻すと、門扉に回し蹴りを放った。
　物凄い音が辺りの里山に響き渡り、遠くにいた鳥たちが羽撃《はばた》いて逃げ出したが、門は固く閉ざされたまま開く様子はない。
　喟《ためいき》を吐き出した琴律は、傍に置いた刀を取り上げ、構えて抜こうとした。そのとき。
「——おうおう姐《ネエ》チャン。なんや、お顔に似合わぬ乱暴狼藉を働いてくれるや...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>第十五話「山椒魚」 - 花魁鳥は夜に啼く</title>
      <link>https://kitaoojimasahiko.kashi-hondana.com/author/page/293/section/7725</link>
      <pubDate>Sat, 08 Jan 2022 12:55:00 +0900</pubDate>
      <description>死者は生きたいとあがく。
生者は生きたいともがく。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　月輪《がちりん》の下、駅前通りに巨大な墓石のごとき影を落として、ショッピングセンターがそびえ立っている。
　地方都市の大型モールは当《まさ》に“摩訶《ばか》でかい”と称すべき規模の商業施設で、もしも子供や年寄り一人で迷ってしまうと、二度と出て来られないのではないか——という杞憂さえ起こさせた。
　これが町にできるというとき、既存の小売店が挙《こぞ》って猛反対した理由も、今なら景《けい》にもよく分かる。
「——土地、余ってンだなあ」
　少し前の方所を歩く姉妹に聞こえぬ程度の声で、独り言を呟く。
　一年前までの夏海景《なつみけい》にとって、その中に居を構えるゲームコーナーが放課後の溜まり場のひとつであった。『超法戦騎《ちょうほうせんき》レッドガル』のゲームで、空子、琴律らとモニター越しに共闘した時間は、何にも代え難い楽しい思い出——となるはずである。
　そう考えた景は、ふん、と鼻を鳴らした。...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>第十四話「離別」 - 花魁鳥は夜に啼く</title>
      <link>https://kitaoojimasahiko.kashi-hondana.com/author/page/293/section/7724</link>
      <pubDate>Sat, 08 Jan 2022 12:53:00 +0900</pubDate>
      <description>死者は生きたいとあがく。
生者は生きたいともがく。</description>
      <content:encoded><![CDATA[「神社に着《つ》け火《び》たァ、最悪だ」
　昔の不良学生のようなポーズでしゃがんだ景《けい》が、憮然として空を見上げた。
「姉さまが早まったことをしなければ。こんなことにはならなかった」
「ごめんってば！　どうしたらいいか分からなかったの！」
　無表情な妹に叱られ、萵苣《れたす》が掌を合わせる。
　雨天も手伝ってなんとか消火はできたものの、社殿の格子戸は燃え失せてしまい、床にも天井にも焦げ跡を作ってしまっていた。鏡を護るように張り巡らされていた注連縄《しめなわ》は琴律の不敬によって踏み千切られて、今すぐには修復などし難い状況であった。御神体の鏡が無事なのが、不幸中の幸いであるといえた。
　四人のエトピリカらは社殿から這々の体で逃げ出し、雨を避けて神社の裏手の杜《もり》に身を潜めていた。空子《そらこ》は一人、周囲を歩き回ったり、高いところに飛び乗ったり、落ち着かぬ様子でうろうろとしていた。
...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>第十三話「冒涜」 - 花魁鳥は夜に啼く</title>
      <link>https://kitaoojimasahiko.kashi-hondana.com/author/page/293/section/7723</link>
      <pubDate>Sat, 08 Jan 2022 12:52:00 +0900</pubDate>
      <description>死者は生きたいとあがく。
生者は生きたいともがく。</description>
      <content:encoded><![CDATA[「神影《みかげ》住宅街で爆発か　大きな音と光、目撃情報相次ぐ」
　二十五日午前零時四十分すぎ、神影市の住宅街で大きな爆発音とともに明るい光を見たという目撃情報が相次いで通報された。県警は何らかの爆発とみて、事件と事故の両面から捜査中。神影市に本社を置くエムケイ都市ガス株式会社および各爆発物取扱事業所らは、いずれも異常はないと回答している。
『神影中央新報二千××年八月二十五日夕刊九面地域情報欄より抜粋』

＊

「——姉さま。無闇に大きな火を出せばいいというものではないの。私達まで危ないでしょう」
「ごめん！　つい！」
　住宅街から少し離れた小さな神社の小さな本殿。その中で、正座した蓬莱萵苣《ほうらいれたす》が妹に叱られていた。
　御神体としてであろう、社《やしろ》の奥には円《まる》い鏡が祀《まつ》られている。これに外からの光が反射して、本殿の中は仄《ほの》明るい。
「味方が敵の近くにいる...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>第十二話「葬列」 - 花魁鳥は夜に啼く</title>
      <link>https://kitaoojimasahiko.kashi-hondana.com/author/page/293/section/7722</link>
      <pubDate>Sat, 08 Jan 2022 12:52:00 +0900</pubDate>
      <description>死者は生きたいとあがく。
生者は生きたいともがく。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　ある、暗い晩である。この晩は星もなく、翌日から雨天になるという予報も出ていた。
　天美空子《あまみそらこ》は薄手のシャツとショートパンツとを着た格好で、深夜の散歩をしていた。
　空子は登校日の夜以来、ほぼ昼夜逆転に近い夏休みを送っていた。いつ出るともしれぬ尸澱《シオル》に備えて昼間眠っておくという名目があるにせよ、中学生らしい健康的な生活であるとは、お世辞にも言い難かった。
　宗清寺の騒動からしばらく経っていたが、あれから阿吽による呼び付けもなく、エトピリカとしての研修も滞っていた。張り合いこそ無かったが、人が襲われるよりは良いと、空子は思っていた。
　霊珠を出してもらうことで変身自体はできるらしかったが、実際に戦う相手がいなければなんの練習もできない。それならば筋トレでもしていた方が増《まし》だ、とは友人・夏海景《なつみけい》の弁であった。
　昼寝と大食のおかげで、夜になると元気が余り...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>第十一話「登校日」 - 花魁鳥は夜に啼く</title>
      <link>https://kitaoojimasahiko.kashi-hondana.com/author/page/293/section/7721</link>
      <pubDate>Sat, 08 Jan 2022 12:51:00 +0900</pubDate>
      <description>死者は生きたいとあがく。
生者は生きたいともがく。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　八月の半ば。神影《みかげ》市立神影中学校では、夏期休業中の登校日を迎えた。多くの生徒たちは、せっかくの長期休暇に水をさす登校日の存在を疎ましがっていた。
　生活が夜型に移行しつつあった天美《あまみ》空子《そらこ》も類に洩れず、休暇中の起床および登校をぐずぐずと面倒臭がってはいたが、学友たちと久々に会って喋れる場である学校へ行くこと自体が厭《いや》だというわけではなかった。一旦｜床《とこ》を出てしまえば、久しぶりに身を飾るのにも気合が入った。
　この日の空子は、身なりに気を入れていた。付け睫毛《まつげ》をばさばさに装着し、髪にはエクステを付けて長めに見せ、アイロンの当たったセーラー服のスカーフをストレートからリボンのように結わえた。この日のために、ネイルアートも施していた。短いスカートの腰回りにはカプセル販売機で購入した小さな腕時計やら色とりどりのビーズやらをじゃらじゃらぶら下げ、その中に...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>第十話「姉妹」 - 花魁鳥は夜に啼く</title>
      <link>https://kitaoojimasahiko.kashi-hondana.com/author/page/293/section/7720</link>
      <pubDate>Sat, 08 Jan 2022 12:08:00 +0900</pubDate>
      <description>死者は生きたいとあがく。
生者は生きたいともがく。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　日付が変わって、午前零時半。
　三人の少女たちは、夏海《なつみ》邸二階の東側に位置する景《けい》の部屋に集まり、車座に腰を下ろして、小さな半裸の男たちの話を聞いていた。
　男たちは、以前と同様に、この部屋の中だけ時間の流れを遅らせているのだという。
「——ああ？　ってことは、あの仏さんたち——」
「左様でございます」
「あれらは浄土真宗開祖｜親鸞《しんらん》の昔よりあの寺に棲み着いていた尸澱《シオル》」
「偶々《たまたま》入り込んだものが阿弥陀《あみだ》仏《ぶつ》像であったため」
「人々に拝まれ続けた挙句」
「肉を喰いたい甦りたいという欲すら疾《と》っくに忘れ去ったものらしく」
「暗がりにて暴れ回り人を驚かす以外にはとくに何を仕出かす訳でもございません」
「この中津國《なかつくに》に永らく居続けたため」
「今となってはもはや神仏と呼び遣わしても差し支えの無い存在でございます」
「誠に失礼...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>第九話「宗清寺」 - 花魁鳥は夜に啼く</title>
      <link>https://kitaoojimasahiko.kashi-hondana.com/author/page/293/section/7719</link>
      <pubDate>Sat, 08 Jan 2022 12:07:00 +0900</pubDate>
      <description>死者は生きたいとあがく。
生者は生きたいともがく。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　機会は翌晩、早速やってきた。
　死後の世界から人を食いにきた化物の出現を「機会」などと呼ぶべきかはさておき。空子《そらこ》の体調は万全であった。
　夜間に於ける“計画的な”外出を初めて行おうとする空子は、夏休みを良いことに日中の睡眠をたっぷりと取り、目覚めた後の夕食もがつがつと食べた。
　素麺、唐揚げ、マカロニサラダ。母の手料理はいつだって旨かったが、こんなに腹に詰め込んだのはいつぶりだろう——と空子は自身の食欲に懐かしさすら覚えた。
　娘の食べっぷりを目の当たりにした空子の両親は、弟を喪った後の娘が、時を経てようやく中学生らしく表情豊かに振る舞うようになったものと感じ入り、胸を撫で下ろしていた。娘がよもや、化物退治に赴くために準備しているなどとは、夢にも思わなかったことだろう。
　そして夕食後、満腹になって自室でくつろいでいた空子の所へ、阿形《あぎょう》が単独で現れたのだった。門前町《...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>第八話「決意」 - 花魁鳥は夜に啼く</title>
      <link>https://kitaoojimasahiko.kashi-hondana.com/author/page/293/section/7718</link>
      <pubDate>Sat, 08 Jan 2022 12:07:00 +0900</pubDate>
      <description>死者は生きたいとあがく。
生者は生きたいともがく。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　中津國《なかつくに》——現世へ戻ってきた五人の中学生たちは、暫しの休憩と食事ののち、阿吽《あうん》の二人から話を切り出された。
「つきましては我々より皆様へご提案がございます」
「エトピリカとしての実地研修を行いたいと考えるのですが」
　次に尸澱《シオル》が出現した晩に集まって、空子《そらこ》たち三人の戦闘訓練を行おうという話である。
　継続して尸澱どもと闘い、被害を食い止めてくれている仲間がいる。そのことを知った以上、協力を惜しむ空子たちではなかった。初戦で辛勝したとはいえ、戦闘はほぼ未経験である。自分達自身が強くなり、暴れる亡者を食い止めて、第二第三の大地を出すまいぞと、強く思った。
「それではお三方とも」
「エトピリカに復帰していただけるのですね」
「大変助かります」
「ありがとうございます」
「別に、あんた達や、あの世の国の為じゃねえよ」
　深々と頭を下げる阿吽たちをきつい目つき...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>第七話「春愁」 - 花魁鳥は夜に啼く</title>
      <link>https://kitaoojimasahiko.kashi-hondana.com/author/page/293/section/7717</link>
      <pubDate>Sat, 08 Jan 2022 12:05:00 +0900</pubDate>
      <description>死者は生きたいとあがく。
生者は生きたいともがく。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　襖《ふすま》を開けた奥は、部屋の中とは思えぬ広さの、蜂蜜色の空間であった。薄明るく、桜の花弁《はなびら》が幾枚も舞っていた。静かな中に、水のせせらぎと、鶯の声とが聴こえた。
「これは……」
　琴律は呆気《あっけ》に取られ、部屋の入口に立ち尽くす。
　辺りには、なにやらいい匂いも漂っていた。
　襖を開いた横手には小さな川が潺湲《せんかん》と流され、これまた小さな朱塗りの太鼓橋が架かっている。橋の傍には、石灯籠が佇んでいた。人工を凝らし、可愛らしく雅趣を感じさせる設計であった。
「春……？」
　思考が停止したかのようにただ呟く琴律。その顔に向かって、正面からいきなり赤いものが飛んできた。
「きゃっ」
　反射的に、飛んできたものを蹴り上げる。赤く丸いものが、とぉーんと宙に跳ね上がった。琴律が見上げると、それは真っ赤なボールのように見えた。
「——なになに？」
「なんだよ。別に変なとこじゃなくね...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>第六話「根之國」 - 花魁鳥は夜に啼く</title>
      <link>https://kitaoojimasahiko.kashi-hondana.com/author/page/293/section/7716</link>
      <pubDate>Sat, 08 Jan 2022 11:53:00 +0900</pubDate>
      <description>死者は生きたいとあがく。
生者は生きたいともがく。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　皆が目を覚ましたとき、相変わらず外は夜のままであった。どれくらい時間が経ったのか、すでに把握している者はいなかった。
　五人は阿吽《あうん》に導かれるまま、夜の道を歩いた。
　うら若き乙女たちが、貴重な夏休みの時間を使って、人が死んだ後に向かうと云われる国を見学するために、ぞろぞろと歩く。夏海《なつみ》景《けい》は、（変なことになっちゃったなあ）と改めて思った。

　姉の萵苣《れたす》はともかくとして、妹の蕃茄《とまと》は完全に下着姿で往来を歩いているではないか——と景が大声で指摘したのは、五人が景の自宅から十五分ほど歩いたところにある稲荷神社の階段を登っている途中である。
　景の部屋の窓をこっそり出てからそれまで、景はその事に全く気付くことなく夜道を歩いていたのであるが、龍泉寺《りゅうせんじ》琴律《ことり》が妙に嬉しげに、初対面の蕃茄と話したがって隣に寄って行くのを不自然に思い、見咎め...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>第五話「朋来」 - 花魁鳥は夜に啼く</title>
      <link>https://kitaoojimasahiko.kashi-hondana.com/author/page/293/section/7715</link>
      <pubDate>Sat, 08 Jan 2022 11:46:00 +0900</pubDate>
      <description>死者は生きたいとあがく。
生者は生きたいともがく。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　その次の夜。
　枕元の携帯電話が、熟睡中の空子《そらこ》を叩き起こした。表示時刻は、午前一時すぎ。夏海景《なつみけい》からの着信であった。
「んぬー」
『おう、クウコ。夜中に起こしてごめんな』
「ううん。どうしたんケイちゃん」
『コトには、さっき電話したんだけどな——』
　眠っていた景の部屋の窓を、外から突然何者かが叩いたのだという。
『知らん女が、二人来てる』
「フハッ？」
　景の部屋は二階であるが、窓の外には手摺りなどなく、誰かがよじ登ったとしても、捕まっていられず落下してしまうはずだった。
『なんだか知らんがよ、ひらひらした格好《カッコ》の女が二人来てよ。話があるとか言いやがってよ』
　景の語調は本人の眠気もあり、ひどく刺々《とげとげ》しい。
『此奴《こいつ》ら、アレなんだってよ。例の、エトピリカ』
「ハアー！？　なんじゃすってえー！？」
　空子は一瞬で目を醒ました。昨晩の、あの二...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>第四話「一年後」 - 花魁鳥は夜に啼く</title>
      <link>https://kitaoojimasahiko.kashi-hondana.com/author/page/293/section/7714</link>
      <pubDate>Sat, 08 Jan 2022 11:44:00 +0900</pubDate>
      <description>死者は生きたいとあがく。
生者は生きたいともがく。</description>
      <content:encoded><![CDATA[長男　｜大地《だいち》　儀
不慮の輪禍により、さる十二日午後、享年六歳で短い生涯を終えました。
降ってわいた事故に、遺された家族とともに悲しみにくれている次第です。　
生前、大変かわいがっていただきましたことをお礼申し上げるとともに、取り急ぎお知らせいたします。
なにぶん幼い子どものことでもありますので、近親者のみにてささやかに密葬の儀を執り行わせていただきます。なにとぞご諒承くださいませ。
なお、まことに勝手ながら、ご供花ご供物の儀は固くご辞退申し上げます。

喪主　父　天美《あまみ》　陸《りく》
　　　女　　　　優海《ゆみ》
　　　女　　　　空子《そらこ》
『神影中央新報二千××年七月二十日朝刊二十三面おくやみ欄より抜粋』

＊

　天美大地《あまみだいち》の幼い死は、発見時の遺体の損壊が常軌を逸していたことや、直接の死因が不明であることなど、その事件の異常性により、警察には変質者の凶...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>第三話「無慚」 - 花魁鳥は夜に啼く</title>
      <link>https://kitaoojimasahiko.kashi-hondana.com/author/page/293/section/7713</link>
      <pubDate>Sat, 08 Jan 2022 11:36:00 +0900</pubDate>
      <description>死者は生きたいとあがく。
生者は生きたいともがく。</description>
      <content:encoded><![CDATA[「あっ、何あれ！　なんかめっちゃ光ったよっ」
　怖々《こわごわ》と共同墓地に入ってきた空子は、一瞬の猛烈な発光と、それに続く物音に、身を竦めた。
　阿形が顔の側へ飛んできて告げる。
「あちらは景様琴律様でございますね」
「えっ、二人ここで、何してんの！？　大ちゃんは！？」
「どうやらお二人はエトピリカになられたようでございます」
「は！？　ええっ何それっ！？」
「大地様は——」
　阿形が言いかけたとき、空子から少し離れた横の砂利に、大きな何かが吹き飛んできて倒れ込んだ。
「ひょわああ」
「苦《く》ッ……おぉのれぇ……」
　墓場の外からかすかに届いた街灯の光を頼りに目を凝らして見ると、唸りながら身を起こしたそれは、白い着物を身体に巻きつけた女である。黒く長い髪や白く肉《しし》起きのよい身体の所々には青白い炎が燃えており、只事でない様子が見て取れた。
「ちょっ、大丈夫っすか！？」
　駆け寄ろう...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>第二話「変身」 - 花魁鳥は夜に啼く</title>
      <link>https://kitaoojimasahiko.kashi-hondana.com/author/page/293/section/7712</link>
      <pubDate>Sat, 08 Jan 2022 11:33:00 +0900</pubDate>
      <description>死者は生きたいとあがく。
生者は生きたいともがく。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　天美《あまみ》空子《そらこ》は普段、夜に一度就寝すると朝まで目覚めることはない。成長期に相応しく、健康な安眠を享受している。ただ、この晩は例外であった。
　耳元で鳴り響く携帯電話が、眠る空子を叩き起こした。
　着信は、夏海《なつみ》景《けい》からであった。
「んあ。ケイちゃん、こんばんみょー」
「クウコっ。大地、どうしてる！？」
「ほへ？　大地？」
「あの後帰ってきたのは、送ってくれたメールで知っとるけどよ。今この時間、大地はどうしてる？　寝てるか？」
「……何のことっすかね？」
　ケイちゃんは何を言っているのだろう、と空子は思った。時計を見ると、午前二時直前を指している。こんな時刻に、小学一年生が寝ていないはずなどないではないか。お姉さんである自分だって、眠くてたまらないというのに。
「とにかく今、大地が寝てるかどうかだけ見てこい。ちゃんと寝とったら、それでいい」
　心なしか、景の息が...]]></content:encoded>
    </item>
    <item>
      <title>第一話「放課後」 - 花魁鳥は夜に啼く</title>
      <link>https://kitaoojimasahiko.kashi-hondana.com/author/page/293/section/7710</link>
      <pubDate>Sat, 08 Jan 2022 11:31:00 +0900</pubDate>
      <description>死者は生きたいとあがく。
生者は生きたいともがく。</description>
      <content:encoded><![CDATA[　それは異形の怪人であった。
　雨上がりの道路上に二本足で立ってはいるが、その全身は針の如き剛毛に覆われ、爪は長く鋭く、尻からは長く尾が伸びている。更には顔面の骨が完全に露出しており、かれがこの世の者ではないことを窺わせた。
　濡れたアスファルトにはいくつかの女人の亡骸《なきがら》が転がっており、腹部や乳房だったところが無惨にえぐり取られている。怪人が、人肉の柔らかい部分を食った跡であった。人体、なかんづく女の肉体は、かれにとっては旨い餌でしかなかった。
　怪人は牙を剥き出し、その隙間から汚らしく涎を垂らし、ぐるぐるぐると喉を鳴らして、数メートル離れた位置に立つ長身の青年を威嚇している。
　まるでアイドルのように整った面立ちの青年が、手入れの行き届いた茶色の髪を風に揺らし、柳眉をゆがめて怪人を睨みつけていた。
　己に対して明らかな敵意を向けてくる怪人から目を離さぬまま、青年は胸ポケットに手...]]></content:encoded>
    </item>
  </channel>
</rss>
